一般的に、若い女性がダイエット目的に始め依存していく、というイメージがある障害ですが、実際には本人の生育環境、家庭環境、本人の発達特性などが複雑に絡み合い、その結果として発症するケースが多いようです。
発達障害が、それぞれ学童期、中高入学後、大学、就職時にその環境における人間関係や管理体制の変化に適応できないように、摂食障害もそうした適応の変化に伴って発症することが多くあります。
例えば思春期のケースの場合、メディアの影響や性徴による身体の変化に伴い、「痩せていること」が集団の中で評価される場合があります。
自身の身体変化をはじめ、異性への意識変化や親との関係性など、多大な変化が起こる思春期に上手く適応できず、目に見えて成果が分かり、同性集団の中で“話題にしておけば注目を得られるもの”としてダイエットにはまっていくという構図は多くあるようです。
元来、若年発症の臨床像として、生真面目で完全主義的、脅迫的な性格傾向があるとされ、いわゆる大人にとって「良い子」という印象で学童期を過ごしてきた彼女らが、自信を支えていた評価価値を見失った結果、「痩せていること」で社会に適応しようとするのは悲しいことです。
また、20代から40代の中高年症例としては、前述したような環境の変化に加え、失恋や結婚、出産等も要因として加わるようになります。この場合も社会や家庭環境に上手く適応できない焦りや不安、ストレスのはけ口としての行為であることが多いようです。
この時期には、単に食べないという制限型の症例よりも、一旦飢餓反応を経て食べ吐きに移行している例が多く、身体状態に注意が必要な一方、すでに自己流のやり方を体得している場合が多いです。
SNSで専用のアカウントを作り、日々の食行動を記録している方もいます。アカウントを見てみると、大量の食品を並べた写真を載せ、「全部吐けた、良かった」「上手く吐ききれなかった、辛い」等と、一喜一憂する様子が伝わってきます。儀式的にも見えるそのような行為に、彼女たちはなぜ執着し依存していくのか。それは自身に問題が起こった際、「他者を頼らず、自身一人で解決しようとする」という性質が深く関係しているように感じます。
「他者にどうやって頼ったらいいのか分からないし、自分一人が我慢すれば上手くいく」という今までの経験の積み重ねから、無言のアプローチとしての拒食、ストレス解消としての過食嘔吐等といった行動に現れるのではないでしょうか。
そのような方たちに治療者として関わっていくにあたり、本人へのアプローチはもちろん、そのような思考に陥った原因の追究、その適正化も必須であると考えます。
例えば、家庭内の居心地の悪さから摂食障害の症状が出現した患者に対しては、本人への治療と同時に家族への関りも必要になると考えられます。特に「家庭」といった閉鎖的な環境において、当事者である構成員は何が正しいのか分からなくなる場合も少なくありません。「家庭」に第三者として関わることにより、家庭環境の適正化、そして症状の治療へと繋がっていくのではないでしょうか。